今は21世紀。20世紀工業社会から21世紀情報社会になり、さらに次の社会へと変化が加速する一方です。

19世紀、20世紀の教育は、乱暴に言えば、決められたことを正確に素早く処理できる人材の大量生産で、どの国もこの古いモデルはよくないと言って変えようとしています。

じゃあ、21世紀に求められる人材とは? 21世紀の教育で最重要視される要素の1つが「創造性」でしょう。

そして、いかに旧来の教育がこどもから「創造性」を奪ってきたかについては、盛んに語られています。

TEDでもっとも再生回数の多いのがこの「学校教育は創造性を殺してしまっている」by Sir Ken Robinson

たっぷりのユーモアもあいまって大人気=多くの人の共感を呼んでいます。

さて、「創造」は、頭の中で起こっているのですが、実際に何が起きているか。それは、ごくごくシンプルなこと。

誰でも習慣化することで創造性を高めることができると私は考えています。

創造=組み合わせ

まったくのゼロから何かを「創造」することのできる人間はほぼ皆無でしょう。

「創造」というと漠然とした言葉ですが、私は以下の仮説を立てています。

「創造」とは既存のモノやアイデアの「組み合わせ」に過ぎない

そうすると誰にでもいくらでも「創造」が可能になります。

やろうとするかしないか、それだけの違いです。誰でも「創造主」になれます(笑)

そこで、圧倒的に有利なのは、組み合わせるためのモノ、アイデア=知識が豊富にある人。

といっても、誰でも知ってるものを組み合わせるだけで、十分に新しいモノ、͡コトを創造できます。

鉛筆と消しゴム。誰でも知っているものをくっつけて消しゴム付き鉛筆を発明した人。同様にちりとり付きほうきを発明した人。

 

算数の応用問題は基本の組み合わせでつくられている

算数は基本問題からすさまじいレベルの応用問題まで色々なバリエーションがあります。

でも!

各分野において、基本はほんの2つか3つ。それらを組み合わせることによって無限に応用問題をつくれます。

目の前の複雑な問題を分解してみると、シンプルに基本を組み合わせているだけのものがほとんどです。

そういう視点で見てみると、問題の構造が見えて理解&対応しやすくなりますよ~。参考まで。

複雑な漢字だってそう。基本のパーツの組み合わせです。こんな複雑なのだって(笑)

「ビャンビャン麺」のビャンの字 全部見たことあるパーツで構成されてます(笑)

まあ、こんな漢字は一生使わないと思いますが・・・

製品の例

TOYOTAの偉大な発明、ハイブリッドカーはまさに組み合わせ。ドイツの偉大な発明、カリーヴルストもまさに組み合わせ(笑)

ドイツの産んだ50の重要な発明
グーテンベルクの活版印刷、アインシュタインの相対性理論、、、ドイツが生んだ世界を変えた偉大なる発明50の中で39番目に登場するのがカリーヴルスト! ちなみにハリボーはもっと上位に入ってます(笑)
https://www.welt.de/wirtschaft/karriere/leadership/gallery12202607/50-Erfindungen-die-die-Welt-veraenderten.html

世界を変えたiPhone。その発表のプレゼン、見たことあるでしょうか?

iPod, Phone, Internet。 この3つの組み合わせがiPhoneだ!「ウォーッ!!!」とすごい盛り上がってます。

この3つだけならホントはガラケーでとっくに実現していたことだったのですが。ガラケーの日本にはなかったもっともっと重要な点、AppStoreのエコシステムとコンピューター機能については説明するとわかりにくいのであえてここでは3つに絞って見せてますね。もちろん、もっともっと色々なものを高度に組み合わせてます。でも、やはり「組み合わせ」なのです。それを完璧なカタチに実現したところがAppleのすさまじいところですね。実際の動画はこちらからどうぞ!↓

スティーブ・ジョブズ iPhone発表時のプレゼン
この3つだ。 iPod, Phone, Internet Communicator これは3つに分かれていない。1つのデバイスだ。 今日、Appleは、電話を再発明するんだ。
https://youtu.be/90gRArwFxCk?t=137

身の回りの色々なものを見まわしてみてください。何と何を組み合わせているのか?という視点で。

この発想をいつも持つことが創造性を高める第一歩です。

Connecting the Dots!

スティーブ・ジョブズのあまりにも有名すぎる名演説、ご存知の方が多いと思います。私も英語の練習も兼ねて何十回か見ました。

 

素晴らしい言葉がたくさん出てきます。ここでは、Connecting the Dots (点をつなげる)について。

Connecting the Dotsは、ここでジョブズが話している意味はもちろんですが、ありとあらゆる面に応用可能で重要なキーワードだと思っています。

上記の「創造」を生む「組み合わせ」も、まさにConnecting the Dotsですし、ここでジョブズのスピーチを半ば強引に(笑)持ち出してくるのもやはりConnecting the Dots(笑)

「つなげる」思考を習慣化するためのヒント

私は日本で理科の講師をしていたのですが、理科で重要な基本的思考方法の1つが「共通点と違いに注目する」ことです。

生徒に伝えていたのは、まず「観察」。観察の際には「共通点と違いに注目する」。そこから発見したことについて「考察・推論」を進めるという3ステップでした。

観察 ⇒ 共通点と違いに注目 ⇒ 考察・推論

共通点・ちがいに着目するというのは、ものごとの奥深くにある原理に通じる道案内になります。

この3ステップにしても、色々な問題へ対処するプロセスを観察して、共通点を拾ってみたらこうだったので、それをシンプルにまとめただけのものです。

理科の問題に限らず、「これとこれって、見た目全然違うけど共通するものがあるな~」とうっすら感じたら、それはきっとビンゴ!そこからさらに掘り下げていくと大きな発見が待っています。

そうやって、外側から内側へ、具体から抽象へ、下のレイヤーから1つ上のレイヤーへと思考のステージが変わります

思考するステージが変わると、俯瞰的な視野に立つことができるので、ものごとを見る目が変わります

見る目が変わると色々なものがつながってきます

そうしたつながりが発展していくと、点だったものが線に、そして面に、やがては立体になる感覚。

武蔵中の理科の入試名物、通称「おみやげ問題」などでは、まさにこの思考が試されていて実に楽しいです。

試験時に封筒が配られ、中には例えば2本のつくりの異なるボルト(ねじ)が入っていて、それについて図と文章で説明せよとか。

これは、そのモノを発明した人の頭の中をのぞく体験につながる楽しさがあります。

視点を持ってものを見てみよう

こうしたことを大人がまず試してみるとよいですね。身近にあるモノ、なんでもいいです。

① あるものを見たときに「何と何の組み合わせか」という視点で見る

② 2つの似たもの(見た目が似ている・機能が似ている)を見たときに「共通点と違いに着目する」という視点で見る

 

思考の習慣でこどもを2つのタイプにわけてみた

こどもには超おおざっぱにわけて2つのタイプがいるように感じます。

表面を見て、裏に隠された原理、関連性を知ろうとする「つなげる派」と原理を考えるのはイヤで、それぞれ別個に丸暗記しようとする「別々派」。

そろばんの例を出してみましょう。

10の繰り上がりのときには、9たせないときには、1をひいてから10をたします。

式で書くと +9=-1+10

ここで、1と9で10になると知っているAくんとBくん。

Aくんは、この時点で、「じゃあ、+8や+7も全部同じように考えればいいんだな」と自ら原理を見つけにいくタイプ。上記したように、見えるものを抽象化して別のものに適用するという高度なことをやってのけています。

Bくんは、文字通りこの情報だけを覚え、+8の場合はどうなるかということに思いがいかないタイプ。このタイプの場合、原理を知ったとしてもそれを使うよりも1つ1つ丸覚えする方を好む場合が多いです。誘導して、「あ、そうか!」と自分で原理を発見するようにしたとしても、原理を忘れてしまううのです。そして、次のときにも原理を考えようという発想がないので、次の機会にもまた丸覚えしようとします。

「つなげる」思考の習慣がない場合には

「1つ覚える、というか既にわかっていることを使おうとすれば何も覚える必要はないのに・・・」と思いますが、その発想、習慣がないので、100個丸覚えようとすることになります。このそろばんの例では、引き算もあわせて18パターン。18パターンととらえるか、1パターンととらえるか。『いろいろなものを「つなげる」=関連付けて抽象化してまとめる』という思考の型を持っているか、持たないかの違いと言うことができるかと思います。

こういう場合、先生があの手この手を尽くして理解してもらおうと頑張って説明しても、頭がよくなるのは先生で、当のBくんは自分で考えること自体がイヤなのでどんどん受け身になってしまいます。ただ、この点についてはまた改めて別の記事で。

Bくんの場合には、「つなげる」という発想が習慣になっていないので、日常でも「つなげる」思考をする癖をつけるとよさそうです。それには、適切な「問い」を適切な形で投げて気づきを得る体験を重ねるとよさそうです。授業の中では、とにかく「対話」!

まとめ

「創造性」のつくり方

  1. 「創造」とは、組み合わせ
  2. 「組み合わせ」という視点を持ってものを見ることを習慣にしてみる
  3. 「共通点と違いに注目」して、ものを見ることを習慣にしてみる
  4. Connecting the Dots!

最初に書いた、「圧倒的に有利なのは、組み合わせるためのモノ、アイデア=知識が豊富にある人」という点について、また、創造性を伸ばすことに主眼を置いた新しい学校などについては、また改めて書いていきたいと思います!

投稿者プロフィール

のぶ先生
のぶ先生
Bingo! Soroban School 責任者
そろばん教室でこどもたちと接するのが楽しくてたまりません。
自信を持って新しいことにどんどんチャレンジする子が一人でも多くなってほしいと願っています。
中学受験専門塾、中学高校受験塾の講師として15年あまりこどもたちに接したのち、紆余曲折を経て2013年ASOBO!、2016年そろばん教室を立ち上げる。2019年いしど式に加盟、全国珠算連盟認定教師。