こどもたちには、自分の頭で考えて工夫するようになってほしいですよね。
それができれば、対象が何であれ、自分で学んでレベルアップしていくことができます。
だから、自分が自分の先生になるんだよ、と言ったりします。

「たくさん練習したらエライ」という思い込み~目的のすり替え

練習するとき、勉強するときに頭の中で何を考えているのかで効果が圧倒的に違ってきます。

いわゆる呑み込みの早い、1回~数回で新しいことを覚えて使えるようになる子と、何回も何回も繰り返さないとできるようにならない子との個人差が非常に大きいのですが、その違いを生む大きな原因の1つが、「頭の中で何を考えているか」と感じます。

これは、こども一人一人との1:1の対話を通じてしか知る由がありません。

ただ、みんなでそれぞれの頭の中を共有することも大事と思い、授業中にこどもたちに質問してみました。

あるレベルまで上達するのに

1 少しの練習で到達
2 たくさん練習して到達

どっちがいい?

とこどもたちに聞いてみました。
そうしたら、「たくさん練習」と答える子が多くてびっくり。というかショック・・・

なんと真面目な・・・
私は不真面目なのでもちろん少しの練習で到達したい派です(笑)
そのために色々工夫するのが楽しいのですが。

生真面目にたくさん練習するのがエライという刷り込みがあるのでしょうか。
21世紀生まれにして昭和スピリット。でも、頑張ることを美徳とすることにはちょっとアブナイ側面を感じてしまいます。
もっとほぐして自由に柔軟にしていきたいですね。

お子さんにぜひ聞いてみてください。

「たくさん練習する、がんばるのはよいこと!」

こんな風に思い込んでいたらちょっと待って! それやってると考えなくなる危険性が高いのでは?

「目的のすり替え」が起きているかもしれません。

・練習することが目的化してる。
・「練習している、がんばってる自分はエライ!」的な自己満足=言い訳に浸っている。

アブナイ頑張り方には2つあると思うのですが、1つがこの「目的のすり替え」です。

大人もよく陥る「手段の目的化」ですね。

無意味ながんばり、ときにはよくないがんばりもあるのです。

無意味にがんばらないで

仕事で求められるのは「結果」。
そして、重要なのは「コスト対効果」。
「コスト」には、当然、労働コスト(労働、時間)が含まれます。

100働いて1の結果を出す人と1働いて1の結果を出す人のどちらがよいか?
後者に決まってます。

しかも、次々に結果が出た方がハッピーに決まってます
結果が出れば、楽しくてモチベーションも激しく上がります

逆に結果がなかなか出ないとモチベーションは下がります。楽しくなくなります。
⇒ここをどうするかが大変なんですよね。

ところが、こどもの教育になると、なにか昭和的な精神論、美徳が持ち込まれてしまう傾向を感じます。
頑張ってればエライ!頑張らないで結果を出してるとずるい、みたいな。

「頑張る」じゃないんだよ。~中学生の発した言葉~

ドラスティックな学校改革が話題の麹町中、ご存知でしょうか?
こちらの記事を読んで、しびれました。
ぜひ、一読を!

「頑張る」じゃないんだよ。できるかできないか、はっきり言ってよ
公立中学が挑む教育改革(15)千代田区立麹町中学校 「頑張る」じゃないんだよ。できるかできないか、はっきり言ってよ

「『頑張る』じゃないんだよ。できるかできないか、はっきり言ってよ。」

「期限が迫っていて、確実に進めなきゃいけない。そんなときにあるチームの進捗を聞いたら『遅れているけど頑張る』という返事だったんです。でもそれだけだと、助けが必要なのか、必要だとすれば何をしてほしいかが分からないじゃないですか。だから『できるかできないかをはっきりさせてくれ』と言ったんです」

麹町中では、生徒の自主性、自律を最重要視し、文化祭などの行事は先生は一切関わらず、すべて生徒たちで行います。これは、その準備期間中の出来事。詳しくはリンク先を。とんでもなく面白いし感動します。「がんばる」という言葉が空虚に使われることって多いですよね。大人の仕事現場でもそうです。この中学生、かっこよすぎますね!

さて、こちらのセミナーの記事でも書きましたが、ただ何も考えずに練習をがんばるのではなく、やはり、練習するとき、ひいては練習する前に何を考えているか?が大切。そろばんに限ったことではありません。

このあたりは授業、対話を通じてこどもたちの頭の中をもっと覗いてみたいと思います。

未来に向けて育てたいこどもの力とは? お父さんお母さんのためのそろばんセミナー

そもそも、練習の目的は?そのためにどうしたら?と自分で考えられるように対話を重ねて育てていきたいですね。これは、勉強に限らず日常のすべてにあてはまることなので、ご家庭でも意識して観察されるとよいと思います。

練習、勉強の方向性が大事

2つめが、「方向性」の問題です。

たくさん練習すること自体には特に意味はない。。。

たくさん練習すると良い結果も悪い結果も生みます。何を考えて、どんな練習をしたか、が問題です。

「下手になる練習」だってあることを音楽教育に革命を起こしたスズキメソード創始者の鈴木鎮一先生が著書で述べています。
まちがった方向で練習すればするほど下手の達人になる、と。
同様に、まちがった方向で勉強すればするほどバカになることもありえそうで怖いですね。。。

例えてみると、東京から九州に行こうという場合。

移動手段は、①歩き ②自転車 ③電車 ④飛行機

1時間の移動で、①歩きはせいぜい4km程度。④飛行機は数百km進みます。
これを④飛行機=たくさん練習、①歩き=ちょっと練習、とたとえてみましょう。

さて、正しい方向に進んでいる場合なら、当然、④飛行機=たくさん練習 がベスト、最短で目的地に到達します。
でも、もし進む方向を間違えて東北方面に向かってしまったら?

④飛行機は気づいたら北海道、目的地とは異なるあさっての方向に、しかもはるか遠くまで行ってしまいますよね。

なので、方向性と練習量で上達度合いがある程度決まってくるというわけです。

まちがった方向に一所懸命練習したら、どんどん目標から遠ざかっていきます。

さらに考えなければいけないことがあります。

見た目は「頑張り屋さん」、中身は・・・。

昔、塾で教えていたころに英単語がどうしても覚えられない中学生がいました。会話も行動も普通で、何か知的障害があるようにはまったく見受けられない子です。でも、英単語を覚えられません。英語の先生が、boyと100回書かせましたが、テストではdoyと書いてしまいます。

なぜなんでしょう?
今となっては、もしかしたら彼は目に障害があって識別できなかったのかもしれないとも思いますが、実際どうだったかはわかりません。
もし、そうした障害が原因でなかったとしたら?

昔読んだ本を思い出しました。引用してみます。

つまり良い結果を出せれば自分が幸福になれるのだから良い結果を出せるように考えて行動すべきということです。

「結果はさておきとにかく頑張っているからよいのだ」という頑張り屋さんは人間が持っている怠け癖を隠しごまかしている場合が多いのです。

頑張っているというのは怠ける人のずるい部分で彼らはよく頑張ってしまうのですそれを見抜くことはなかなか難しいものです。

出典「仏教は心の科学」 アルボムッレ・スマナサーラ

スマナサーラさんは、テーラワーダ仏教の長老です。日本でも人気があり、たくさんの本も著されています。
テーラワーダ仏教はスリランカの仏教で、釈迦が説いた教えを忠実に継承しています。
釈迦は、徹底的に論理的に思考した2500年前の大天才、哲学者です。釈迦は「神」について、「あるかないか知りようがない」として存在を肯定も否定もしていないことからも、他の宗教とはまったく異なります。というか、そもそも神がいない時点で宗教ではないですよね。なので、どこまでも論理的。

この本の中に、「怠け」についての一節があります。それをやったらもう何も実現できない、人間がダメになる、命が駄目になる原因の一つとして「怠け」があると。そして一番厄介な怠けが、「真面目にしっかり頑張っていて結果が出せない」人のパターンというのです。

彼のお弟子さんの中に、正真正銘の怠け者がいたそうです。非常に真面目に勉強ばかりしているのに結果はさっぱり。他の坊主は遊んでばかりでもずっと良い成績です。スマナサーラさんは、そのお弟子さんがそもそも何も理解しようとしていないのだと気づきます。そして、それが分からないように勉強しているふりをしてごまかしているのだとも。

ここを読んだ時はかなり衝撃を受けました。

でも、そこまでではなくとも、意外と似たケースはあるのかな、と思い当たる節も。

形は勉強しているように見えても頭の中は全く動いていない、実際そういう子はこれまでもかなりいました。

では、どうしたら?

英単語を100回書いても間違える。なんでできないんだろう?

練習方法を変えてみよう。一度に10個が無理なら3個だけ覚える用にしよう。声に出そう。書いてみよう・・・
先生がいくら頑張って色々工夫を重ねたところで、実はその子のためにはならないんじゃないか?

この子は、そもそも英単語を覚えようとしていないんじゃないか?
「そこからか!!!」とは思いますが、結構そこからだったりします。

実際、何も考えずにただ100回書くことだけ機械的に作業している。
場合によっては、doyと100回書いてたり、ddddddddd、ooooooooo、yyyyyyyyyと書いてたり。意味わかるでしょうか?(笑)
目的が「100回書くこと」になっていて、単語を覚えようなどとは夢にも思ってないなんてことは実はザラにあったりします。
それでは、仮に単語を覚えたとしても頭は良くならないんじゃないか?

では、どうしたら?

「目的意識」を持って「正しい方向性」を持って、頭を使う、ということに尽きます。

当たり前のことですが、当たり前にできる人は意外に少ないもの。

目の前のこどもをよく見て、無意味な頑張りをしていないか、頭の中はどうなっているのか、観察しながら、対話しながら目的を確認したり、方向性を修正したりすることが先生の側には求められますね。これは難しいですが、こどもとじっくり対話して、お互いに気づきがあって何かが変わるというのは、とても楽しく嬉しいプロセスです。

要は結果。労力対効果の最大化を意識する

スマナサーラさんはサラッとこう言ってます。

要は結果なのです。「何時間頑張るか」「どれだけがんばったか」はどうでもよいのです。

短い時間、少しの練習で最大の効果を上げられるようにと常に考える、工夫する、そういう姿勢でいたいですね。

 

まとめ

がんばっても結果が出ないとき・・・

「目的のすり替え」が起きてるかも?
まちがった方向に向かって「がんばって」いるかも?

仕事で求められるのも「結果」。
最小の労力で最大の結果を出せればベスト。

結果が出た方がハッピー
結果が出れば、楽しくてモチベーションも激しく上がる

何の練習のときでも、目的~何を上達したいのか、そのためにどうしたらよいか、考える子は伸びが速い。

がんばること自体を目的化しないで!
目的、意味のある練習を。

ということで、自分のことはもちろん棚に上げて書いてみました! 読み返すと、頭が痛くなることばかり(笑)

最後まで読んでいただきお疲れ様でした&ありがとうございました!

追記!おすすめ動画(1分)

この記事を読んでくださった超多才なアーティストの方が素敵な動画を紹介してくれたのでぜひ!1分間と短いですが、すごいです!特に最後(笑)

2019.06.09

投稿者プロフィール

のぶ先生
のぶ先生
Bingo! Soroban School 責任者
そろばん教室でこどもたちと接するのが楽しくてたまりません。
自信を持って新しいことにどんどんチャレンジする子が一人でも多くなってほしいと願っています。
中学受験専門塾、中学高校受験塾の講師として15年あまりこどもたちに接したのち、紆余曲折を経て2013年ASOBO!、2016年そろばん教室を立ち上げる。2019年いしど式に加盟、全国珠算連盟認定教師。