2月26日に文部科学省で行われた麹町中の研究発表を見に行ってきました!
(行ったと言ってもウェブで公開されているURLを見に行ったのですが)
リアルタイムで見るために5時起きでしたが、早起きは三文の得どころか宝の山でした。
現在はYouTubeでいつでも見られます。
当日の様子( You Tube ) NEW
配布資料2種( 事例 研修生の感想 )~麹町中ホームページより転記
動画、ぜひ見ていただきたいのですが、3時間半と長いです。以下特に重要と思った点について主観たっぷりに書きました。
その前に予備知識。既に麹町中についてご存じの方は読み飛ばしてください。
麹町中がなぜそんなに話題なのかについてはこちらを参照ください。
生徒を信じて待つこと9か月
先に特に印象に残ったエピソードを紹介します。
「教えない」授業を実践する数学の先生。
こどもたちはタブレットや教科書以外の教材何を使ってもよく、自分たちで選択して自由に学んでいきます。
こどもたち自身が感じるメリットは、
- 教えあいができる(アクティブラーニング)
- 自分のペースで学べる
デメリットは、集中できず、話してしまう
そして、中1のクラス、ずっとYouTubeを見たりおしゃべりするグループが。
先生は何かを強制することなく見守ること9か月。グループ内の2人が自ら勉強を始めたところで、
「Bくん、ここ難しいみたいだから教えてあげてくれるかな?」と声をかけると「いいよ」と喜んで。
その後グループ全員が勉強するようになり、1か月半で1学年の範囲すべてを学んでしまったそうです。
先生が見守る中で伝えていたのは、君たちには自分が何をするか選択する自由がある。そして、選択した結果については自分で責任を持つこと。
9か月待つって、尋常じゃないですよね?
根底に、生徒への深い信頼があってこそだと思います。
こどもとの信頼関係を構築するというのは、「先生」という立場においてまず真っ先に必要なことだと思っています。
まず、先生が生徒を絶対的に信頼するところから始まるのでしょう。
最重要目的は何か?
工藤校長先生は最初、この言葉を最重要目的に掲げていました。
「世の中はまんざらでもない。結構、大人って素敵だ」
そう思えるようになること。
これ、ホント同意です。そもそもこどもたちに聞くと「ずっとこどものままがいい」「大人になりたくない」「大人って大変そう」という声が。そうなんです。それ、将来像が全然幸せそうじゃない。普段からたくさんの素敵なオトナに接して、オトナって楽しそう!と思ってほしいですよね。
楽しそうな素敵なオトナはたくさんいる。そういうオトナと出会える機会をたくさんつくりたいし、そもそも常に子どもに接する自分たち自身がまずそうでありたいといつも思います。
麹町中の教育目標
- 自律 自ら考え、判断、行動
- 尊重 違いを理解し、他者を尊重
- 創造 豊かな発想で、新たな価値を生み出す
日本の18歳の自分自身に関する衝撃的なデータ
出典:日本財団 18歳意識調査 第20回 国や社会に対する意識調査
日本は他国の追随を許さぬ圧倒的最下位…
なぜか?
工藤先生の考えは、教育のジレンマでもあります。
手をかければかけるほど生徒は自立できなくなり、
自分がうまくいかないことを他人のせいにするようになる
そうなんです!これは教室でもよく話していることで、教師が熱心なほど生徒は受け身、依存する。
ちなみに東大京大で根強く支持される異例のロングセラー、「思考の整理学」の冒頭で著者の外山滋比古は、まさにこれとまったく同じことを指摘し、これまでの教育は自力飛翔できない「グライダー人間」を大量生産してきたが、これからはそれでは話にならない旨を述べています。
麹町中に入学してくるそうした子の特徴として
・自分が嫌い
・自分を否定
・他人が嫌い
・先生が嫌い、信頼できない
・他人を尊重できない
麹町中では、そうした子のリハビリにほぼ1年を要するそうです。(個人差はもちろんあります)
全員を当事者に
どうしてそうなってしまったのか?
それは、手段と目的のはき違え
学力、自分で学ぶ力、考える力をつけるはずが、よかれと思って教師や親があれこれ手をかけて子ども自身が考えなくさせている。
そうならないためにも、最上位目標を共有し、常にそこに立ち返ること。
押し付けられる教育ではなく、全員を当事者に変えていく教育を。
この「全員を当事者に」。これは本当に重要だけれども難しいこと。学ぶのはこども。こどもが主役であるはずがそうなっていない。こどもも親も先生もそこを共有することがベースになる。
脳科学からのアプローチ
脳科学は2008年ころにブレイクスルーが起きて、人間理解に関して一気に研究が加速して様々なことがわかってきています。
教育の分野で脳科学のアプローチから重要だとわかってきた要因が
1 心理的安全性
2 メタ認知
心理的安全状態をつくり出す環境づくりが大事。心理的危険状態と安全状態とでは脳の機能がまったく異なってくる。
例えば大きな声で生徒をしかりつける、ミスしたら許されないような環境は心理的危険状態。
心理的安全性は、職場の生産性に大きな影響を与えることも知られています。当たり前ですが、こどもも大人も同じですね。Googleの研究発表で注目を集めるようになったそうです。Google, 本当にすごい・・・
こちらはお仕事にも非常に有用な情報と思いますのでリンクを貼っておきます。
re:Work Google 「効果的なチームとは何か」を知る
心理的安全性の作り方・測り方。Google流、生産性を高める方法を取り入れるには
心理的安全状態の環境
のびのび、失敗しても大丈夫という環境。
社会では挫折、トラブルは当たり前、トラブルが起きないと勉強にならない。
トラブルをどう学びに変えていくか。
職場でも教育の場でも重要な「心理的安全性」。もっとわかりやすい言葉で言うと、「信頼」がベースになっている環境です。
信用と信頼はちがいます。この辺りは以前にこちらで書いたものを思い出しました。
ここにも触れていた、信頼の文化をつくること。それがあるから安心して失敗できる。チャレンジできる。学びがある。成長がある。そう思います。
これからの教育の方向というのはもう世界中で共通認識がほとんど確立されているように感じます。
以前記事にしたYuval Noah Harari氏も、How to deal with Fehler(失敗にどう対処するか), Get to know yourself(自分自身を知る)と言い続けています。メタ認知、安心して失敗できる環境づくり~心理的安全と非常に重なりますよね。
これからの世界で必要な力を伸ばすには? ~The Future of Education – Yuval Noah Harari
そして、失敗、挫折といったネガティブをポジティブに変えていくのにメタ認知がキーになりそうだということです。
メタ認知:自分から見た自分、他人から見た自分、さらにそれを俯瞰的に見る視点。
こどもが主役になる、メタ認知と主体性を促す声かけ
次のような声掛けを意識的に行っているそうです。
①今、君はどんな状態なの?
②君はどうしたいの? どうなりたいの? →最重要
③先生はどんなサポートができるかな?
これは、すごく参考になります。大人(先生)が自分の意図を押し付けません。
子ども自身が自分と向き合い、自己の状態と、自分が本当にしたいことに気づけるように。
そして、自分のしたいことを実現するために他者にサポートしてもらう。
こうした1つ1つの小さなプロセスが実はすべてそのまま、その後の人生で自己決定・選択していく際に有効なのではないでしょうか。
その意味でとても大切なアプローチと思えます。
ぜひ、日々の実践に生かしていきたいと思いました。
自分をつくるための手段が自由なんだよ
しびれる言葉ですね~
いくつも素敵な言葉が飛び出してきたのでそのうちいくつかを紹介します。
・自分をつくるための手段が自由なんだよ
・葛藤→脳がものすごく成長する 葛藤を止める→成長を止める
・保護者ではなく、サポーター
・一切の文句を受け付けない。意見=当事者としての考えはオールOK。
・先生・オトナが自己を手放す。自分(先生・オトナ)が状況・できごとから学ぶ・変わる
まとめ
動画見てください!
私が改めて感じたこと。敢えてたった1つに絞るとしたら、もうこれに尽きます。それは、
こどもを信頼すること。
ここに始まり、ここに帰ってくるのではないでしょうか。
私たちオトナは、こどものことを信頼しているでしょうか?
投稿者プロフィール

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Bingo! Soroban School 責任者
そろばん教室でこどもたちと接するのが楽しくてたまりません。
自信を持って新しいことにどんどんチャレンジする子が一人でも多くなってほしいと願っています。
中学受験専門塾、中学高校受験塾の講師として15年あまりこどもたちに接したのち、紆余曲折を経て2013年ASOBO!、2016年そろばん教室を立ち上げる。2019年いしど式に加盟、全国珠算連盟認定教師。
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